ワークバランスを欠いた副業

育ち盛りのこどもを抱えた主婦にとって、副業は枯渇しそうな家計に希望を与えてくれる最後の砦です。食費や教育費など、上手くやりくりできなかったマイナスをなかったことにできる、また、突然の物入りに対応する為の保険にもなります。本業の他に、どれだけ副業をしているかどうかで、心の安定が違うと言っても過言ではありません。

その頃、ゴールデンウィークなどのまとまった大型連休に、普段の倍以上の副業に励むのが私の生活スタイルでした。こどもを園に預けている間のすべてを、本業ではなく副業の時間にあてることができるのです。副業は趣味に近い仕事内容でしたので、作業量が多くても、ほとんど疲労を感じずに長時間頑張ることができました。

ところが、ある時、悲劇が起こったのです。私は、本業と副業の他にも大切な仕事があるのでした。それは、私にしか務まらない母親業というものです。親にとって、こどもの発熱や体調不良はまったなしです。しかし、個人でコツコツと信用を積み上げてきた副業の納期も、待ったなしなのでした。こどもを病院に連れて行き、体調を整えながら、過労にあえぎながら休む暇も食べる暇もなく、こどもの休息時間に泣きながら仕事を片付けていく・・。そんなことでは、大量に引き受けてしまった仕事は納期に間に合いません。私は、副業をする上で最も大切なことを、お金のためにすっかり忘れていたのです。

『ワークバランス』というものです。まとまったお休みさえ手に入れば、普段よりずっと多くの仕事を片付けることができると。ワークバランスはあとでどうとでも調整できると高を括っていたのです。私はスーパーマンではないのに、時間さえあれば『普段の倍以上はできる』という意識を持ちすぎていました。しかし、家事や育児もまた大切な『仕事』のひとつであり、融通の利かないこどもという存在を第一に考えなければ、結局は積み上げてきたものは脆くも悲しくも崩れ落ちてしまうのでした。

そんな八方塞の私を救ってくれたのは、休日出勤がなく、連休にはしっかりと休むことが出来る会社員の夫の存在です。家事と育児という名の仕事を請け負ってくれ、私のワークバランスを欠いた、欲張りすぎた仕事の悲劇を支えてくれました。こどものことや家事を心配しなくても良くなったことで、しっかりと仕事に集中できるようになり、能率は遥かに上がりました。

温かいごはんを運んできてくれる夫に感謝しながらそれを口に運ぶと、それまですっからかんだった胃袋で片付けた仕事はどこか空虚なものに思えたのに、安心と満足の中で仕上げていく仕事は、どこか余裕があり、クオリティーの高いものになっていたと思います。本業に比べて、副業はどこか片手間なイメージをもって励んでいましたが、それは私の間違いで、こうやってしっかり支えられ、余裕のある状態でやらなければ、結局は失敗したり、クライアントに迷惑をかけてしまうことは本業となんら変わりがないのでした。

大切なことは、道をそれた時にも見つけることができる

私はその大きな失敗の中で、支えられるということの有り難さと、あたたかいごはんの喜び、こどもとゆっくりお風呂に入る幸せを強く感じました。何のために仕事をするのか。何のために副業をするのか。その答えが見えた気がします。それは、淡々と黙々とお金の為だけにこなして行くのではなく、当たり前の幸福を再確認するためのものでもあるのです。副業が根底で我が家の家計を支えてくれるのと同じで、家族という存在もまた、お金を消費するだけの存在ではなく、私を根底で強く優しく支えてくれるものだったのです。その、自分が頑張れる原動力である家族の存在が、私を今日も動かしてくれています。